- 第4章:粒子の誕生と標準模型の成立
~陽子と電子が出会ったら、宇宙はラブストーリーになった件~
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🔹ようこそ、素粒子の世界へ。
もしも世界が寿司屋だったら、 「大トロ」「中トロ」「玉子焼き」といったネタが粒子です。
「これがないと宇宙は回らない!」という主役級ネタが、 クォーク(quark)・レプトン(lepton)・ゲージボソン(gauge boson)です。
「クォーク?聞いたことあるけど、なんかチーズっぽくない?」 「レプトン?なんかモビルスーツにいそう」
安心してください。そう思って当然です。
でも、彼らがいなかったら、 宇宙も、あなたも、牛丼も存在しません。
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🔹三大粒子をざっくり分類するとこうなります。
種類 例 役割 電荷 スピン 主な相互作用
クォーク アップ、ダウン 陽子・中性子を構成 ±1/3, ±2/3 1/2 強い力、電磁力、弱い力
レプトン 電子、ニュートリノ 軽くて単体で存在 ±1, 0 1/2 電磁力、弱い力
ゲージボソン 光子、グルーオン 力そのものを運ぶ存在 0 1 それぞれの力を媒介
クォークとレプトンは「物質の材料」。 ゲージボソンは「物質同士の会話ツール」みたいなもんです。
ちなみにクォークは単体では見つかりません。
アイドルの私生活みたいに、ぜったい表に出てこない。 3つセットでくっついて陽子や中性子になってるからです。
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🔹「対生成」と「対消滅」って何?
さて、宇宙の初期って、熱すぎてヤバかったんです。
熱いってレベルじゃねぇ!ってくらい高温高圧で、 エネルギーが暴れ回っていました。
そのエネルギーから突然、「粒子と反粒子」がセットでポンッと生まれたり(対生成)、 出会った瞬間に「あ、アンタ反対のやつやん」と言って消えたり(対消滅)してました。
たとえば:
光(エネルギー)→ 電子 + 反電子(陽電子)
電子 + 陽電子 → 光(エネルギー)
まさに「出会って5秒で消滅」状態。
これがバランスよく繰り返されていたら、 今の私たちは存在しなかったかもしれません。
じゃあ、なんで「物質」だけが今も残ってるの?
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🔹CP対称性が破れるとき
物質と反物質って、 「性格が真逆だけど見た目そっくりな双子」みたいなものです。
基本的には対称性(CP対称性)を持っているはずなんですが、 この対称性がビミョ〜に崩れる瞬間があったんです。
それが「CP対称性の破れ」。
つまり、
「反物質と物質はまったく同じようにふるまう」 → と思ったら、ほんの少しだけ物質の方が“ズル”してた
…そんな感じです。
この“ズル”があったからこそ、 今の宇宙には「物質」が勝ち残り、 反物質はほぼ全滅。
言ってしまえば、 我々が存在しているのは、宇宙の不公平のおかげなんです。
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🔹標準模型とは?
「標準模型(Standard Model)」というのは、 このクォーク・レプトン・ゲージボソンの関係性を 見事にまとめあげた「素粒子界の相関図」みたいなものです。
物理学者たちが数十年かけて完成させた、 超精密・超強力なモデル。
ただし。
・重力が含まれてない ・ダークマターが説明できない ・ニュートリノに質量があるか謎
…など課題も多く、 「俺たちの旅はまだ始まったばかりだ!」感がすごい理論でもあります。
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🔹まとめ:
宇宙が始まってから、 「エネルギー→粒子→複雑な物質」へと進化していくこの流れ。
最初に生まれたクォークやレプトンが出会い、 光とぶつかって消え、 奇跡的に残ったわずかな物質たちが今の宇宙のすべてを作っている。
これって、 **「宇宙って、ほぼ奇跡でできてる」**ってことじゃないですか?
しかもその奇跡を数学で再現できるなんて、 物理って本当にスゴい。
次章では、そんな奇跡の証拠「宇宙背景放射」について語っていきましょう。
いよいよ、宇宙が“光り出す”瞬間です。
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